ふと気がつけば、向かい側に桜花ちゃん達はいなくなっていた。
わたしってば、教室に入らないままずっと廊下にいたのか。



「沙織ー、沙織ー?」



「はっ、2人とも」



いつのまにか、奈緒と美咲が廊下に出て、わたしのそばに立っていた。



「どうかしたの? もしかして、栗原さんのこととか……?」



奈緒が少し、おずおずとした感じで聞いた。


わたしは、身体が無意識に跳ねたことを見てとって奈緒と美咲は、なるほどねー、と頷きあう。



「やっぱりねぇ……。沙織って、結構心配性なところあるもんね」



美咲が腕を組んで、数度頷きながら言った。



「わたし、なんとかして桜花ちゃんを立ち直らせたいの」



「それって結構難しいでしょ……。だって失恋だよ……?」



「そうだけど、桜花ちゃんは数年前、あんなひどい目にあったんだよ? 放っておくなんて、できないよ」



わたしは、美咲にいつもより少し強く言い返した。


わたしが桜花ちゃんの立場だったら、きっと耐えられない。付き合っていた彼氏に暴力を振るわれた過去を背負いながら、失恋したショックまで抱えるだなんて、想像しただけでも辛い。



「まあでも、もう一度栗原さんと話してみたら?」



「そうする」



奈緒の提案に、わたしは大きく頷いた。