お前がいる場所が、好き。Ⅰ


「次は、何かな?」



コビトペンギンから離れて、わたしは言った。



「イルカショーが近くにあるし、もうすぐ始まるらしいぞ。見るか?」



パンフレットを持った彼が言った。


え!? 今、イルカショーがもうすぐって言った?



「本当に? やったー! 見る見る、絶対見るー!」



わたしは、いつもの2倍くらい声量を上げた。当然周りの人達は、びっくりしてわたしの方を見ている。



「おいおい落ち着け。小学生みたいにはしゃいでないで」



わたしとは対照的に、彼は周りの人達を気にするそぶりを見せながら言っている。



「だって嬉しいもん!」



イルカは、わたしが1番好きな動物だ。
わたしは小走りで、イルカショーの場所へと向かう寺本の背中についていった。


イルカショーを見るのは初めてではないけれど、毎回楽しみを抑えられない。


わたし達が席に座ると、5分程度でショーが始まった。
ボールを嘴でつついたり、ジャンプしたりとイルカは踊るように動く。



「ひゃあっ!」



わたし達は1番前の席にいるので、当然水がかかる。
イルカの芸を見ては、水をかけられるということが繰り返され、あっという間にショーが終わった。



「ぶはっ! お前、ずぶ濡れじゃねぇか!」



わたしの姿を見て、寺本は大笑いしている。
全然人のことを言えていないけど。



「そういう寺本も、びっしょびしょじゃない!」



絶対分かっていたくせに、寺本は今気づいたかのように、ほんとだ、と言うのでわたしは笑いが止まらなかった。