アデリーペンギンやキングペンギンは、沢山いるのに、なぜかコビトペンギンらしき姿がどこにもなかった。
「コビトペンギンはいないのかな?」
「他の水槽にいるよ。あいつら、このペンギンよりずっと小せえから」
コビトペンギンは、小さくてぬいぐるみのようにコロコロしているイメージがあって、思わず口角が上がる。
「そうなんだ! わたし、コビトペンギン見たことないんだよね。このペンギン達がこんなに可愛いんだったら、コビトペンギンも可愛いんだろうなぁ」
「あんまり期待しない方がいいぞ」
「えっ? なんで?」
「顔をよく見たら、分かる」
そんなことを言われても、わたしはそのコビトペンギンの顔を見たことがない。
「えー、そんなこと言われるとますます気になるじゃん」
今度は、わたしが彼の脇腹を小突く番だ。
「うっせーな。じゃ、これ見てみろ」
寺本がバッグから取り出したスマホの画面には、コビトペンギンの写真だった。手で拡大すると、かなり強そうな目をしていて、思わずわたしは手で口を隠した。
「だから期待すんなって言ったんだよ」
寺本の言う通りかもしれない。わたしの想像した、幼い子供のように、大きなくりくりとした目をしたコビトペンギンとは違う。
けれど、彼の「期待しないほうがいいぞ」という言葉を聞かなかったら、もっとがっかりしていただろうな。
「でも、それってわたしの為? ありがとう!」
「いや、ちげえよ。勘違いすんな」
「でも可愛くないことは、ないかも!」
確かに、鋭い目つきだったけれど小さな身体でぺたぺた歩く姿は可愛いに違いないだろう。
「ちっちゃければ何でもいいってことか」
寺本は、そう言って深いため息をついた。



