「ここは、ペンギンだな」
「わっ! めっちゃ速っ!」
熱帯魚の次は、ペンギンの水槽だった。
水槽の中に、何百羽ものペンギンが飛ぶように泳いでいる。
「この水族館には……。キングペンギン、アデリーペンギン、コビトペンギンの3種類がいて、あの足がピンクなのがアデリーペンギンだな」
わたしは、もう何年も水族館に言っていないのでアデリーペンギンは見たことがなかった。
「へぇー、寺本は詳しいね!」
「そら、俺ここにはもう何回も弟や妹と来てるから。小さい頃から行ってて、もう10回は来てるよ。そんぐらい来てる奴だったら誰でも分かるよ」
なによ、せっかく褒めてあげたのに、とわたしは思った。わたしの顔なんか見向きもしないで、褒めても何も出ないみたいな表情をしている。
「そんなにたくさん来てるってことは、弟さんや妹さんもここが好きなんだね」
わたしは、今さっきのことを水に流してから言った。
「おぅ。イルカとか見ると、いっつも妹はうっさいし。サメとか見ると、弟も昔の俺みてえに騒ぐし」
「『昔に俺みてえ』ってことは、結局人のこと言えてないじゃん」
いつものように、わたしはくすくす笑いながら突っ込んだ。
「確かにそうだけど、そん時の俺よりうっさいんだよ」
自分は悪くないと言っている子供みたいで可愛すぎる、とわたしは思った。それと同時に、水族館ではしゃぐ幼い寺本まで想像してしまい、ますますわたしは笑いが止まらなくなった。



