『 綾牙だよ。』



その言葉を言うには勇気がいった。


あたりにあるはずの音は一切聞こえなくて。


ああ、どうしよう。


亜蓮の方が苦しいはずなのに、どうしてこんなにも泣きそうになるんだろう。


亜蓮はどん底にいたわたしにもう一つの居場所をくれた。


私の恩人だ。
でも、亜蓮を好きには、なれなかった。
愛せなかった。


胸を張って愛してるとは、言えない。


亜「そうか。ありがとな、返事くれて。
悩んでくれたんだろ?」


そんなに苦しそうな顔で、笑わないでよ。


亜蓮のきもちに気づいていながら気づかないふりをしていた私を罵って欲しかった。


余計に苦しいよ。