エストラルダ帝国の美麗な女剣士をその手中に抱えた、魔王と呼ばれる青年を追い、ロータス一族の雅な大魔法使いが、ファルマス・シアと呼ばれる荒れた大地に足を踏み入れた時、既に、辺りは夕闇の茜に染まり始めていた。
強固な迷彩の結界に守られ、古より、幻の城(ロイアー・カークス)と呼ばれるあの闇の魔法使いの居城を追うのは、流石のロータスの大魔法使いにも幾分至難の業であったようだ。
しかも、その名の通り、かの者の居城は、まるで砂漠の蜃気楼の如く、日々緩やかにその位置を変え、近くなれば遠くなり、遠くなれば近くなる、まことに厄介な結界の施された城であるのだ・・・
いつもは冷静沈着なロータス一族の大魔法使い、スターレット・ノア・イクス・ロータスの時に美しいとさえ形容される秀麗で雅な顔が、ひどく厳(いかめ)しく歪んでいる。
荒れ果てた荒野の乾いた地面を踏み締めて真っ直ぐに立つと、彼は、静かに綺麗な銀水色の両眼を閉じたのだった。
荒野を渡る砂混じりの風に、輝くような蒼銀の髪が激しく乱舞する。
不吉なほどの深紅に染まる西の空から、高い声を上げながら吹き付けてくる強い風。
その風に乗る精霊達の声に耳を澄ませて、彼は、何かに気がついてハッとその両眼を開いた。
びゅうんと甲高い音を立てて、吹きすさぶ烈風が茜の空で鳴いた。
次の瞬間、彼の鋭敏な六感が何者かが近づいてくる気配を感じ取る。
にわかに背後を振り返るスターレットの美しい銀水色の瞳に、火の粉を撒き散らし黒く揺らめく闇の炎が、虚空の最中から急速に映り込んで来たのだった。
「!?」
思わず見開いたその視界で、深い青のドレスを纏う美麗で妖艶な女性が炎の中から、優美な姿を現してくる。
艶やかで性悪な微笑みを紅の唇に刻みながら、黒い炎をしなやかな肢体に絡ませるその女性は・・・明らかにあのエストラルダのアストラ剣士ラレンシェイ・ラージェであった。
しかし、見事な赤い髪は闇を移した漆黒に変わり、凛と鋭い茶色の瞳は、まるで氷のような冷たい青玉の色に変わり果てている。
黒い前髪が揺れるその綺麗な額には、紫色の炎の烙印が刻み込まれ、それは、まさしく、魔王の手によって、ラレンシェイの体に魔性の魂が填め込まれたという事の証であった。
強固な迷彩の結界に守られ、古より、幻の城(ロイアー・カークス)と呼ばれるあの闇の魔法使いの居城を追うのは、流石のロータスの大魔法使いにも幾分至難の業であったようだ。
しかも、その名の通り、かの者の居城は、まるで砂漠の蜃気楼の如く、日々緩やかにその位置を変え、近くなれば遠くなり、遠くなれば近くなる、まことに厄介な結界の施された城であるのだ・・・
いつもは冷静沈着なロータス一族の大魔法使い、スターレット・ノア・イクス・ロータスの時に美しいとさえ形容される秀麗で雅な顔が、ひどく厳(いかめ)しく歪んでいる。
荒れ果てた荒野の乾いた地面を踏み締めて真っ直ぐに立つと、彼は、静かに綺麗な銀水色の両眼を閉じたのだった。
荒野を渡る砂混じりの風に、輝くような蒼銀の髪が激しく乱舞する。
不吉なほどの深紅に染まる西の空から、高い声を上げながら吹き付けてくる強い風。
その風に乗る精霊達の声に耳を澄ませて、彼は、何かに気がついてハッとその両眼を開いた。
びゅうんと甲高い音を立てて、吹きすさぶ烈風が茜の空で鳴いた。
次の瞬間、彼の鋭敏な六感が何者かが近づいてくる気配を感じ取る。
にわかに背後を振り返るスターレットの美しい銀水色の瞳に、火の粉を撒き散らし黒く揺らめく闇の炎が、虚空の最中から急速に映り込んで来たのだった。
「!?」
思わず見開いたその視界で、深い青のドレスを纏う美麗で妖艶な女性が炎の中から、優美な姿を現してくる。
艶やかで性悪な微笑みを紅の唇に刻みながら、黒い炎をしなやかな肢体に絡ませるその女性は・・・明らかにあのエストラルダのアストラ剣士ラレンシェイ・ラージェであった。
しかし、見事な赤い髪は闇を移した漆黒に変わり、凛と鋭い茶色の瞳は、まるで氷のような冷たい青玉の色に変わり果てている。
黒い前髪が揺れるその綺麗な額には、紫色の炎の烙印が刻み込まれ、それは、まさしく、魔王の手によって、ラレンシェイの体に魔性の魂が填め込まれたという事の証であった。


