神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>

 それを目にしたリーヤは、驚いたようにジェスターの端正な顔を仰いだ。
 だが、そんな彼女に振り返る事もなく、彼は、何も言わずに、ただ、悲哀の影を孕む燃えるような緑の眼差しで、泣き叫ぶへディートを見つめているだけである。
「何で殺したの!!何で・・・・!!姉さんは、ただ、アランが好きだっただけなのに―――っ!!」
 涙を飛び散せてそう叫ぶ彼女に、返す言葉などない。
 しかし、へディートとて、解っているのだ。
 魔物に姿を変えしまった姉を救うことなど、出来なかったことを・・・・
 そして、自分が今、その姉が愛したこの青年を責めていることが、どんなに理不尽であるかも・・・
 頭ではわかっていても、この悲しみと悔しさをどうすることもできない・・・・
 姉を殺した張本人である彼に、それをぶつけるしか術(すべ)がないのだ・・・
 琥珀の髪を振り乱し、泣き叫ぶヘディートの声が、吹き抜けていく風と共に、生い茂るの木々の合間にこだまし響いていった。