神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>

凛々しく端正な顔を鋭い表情で歪め、その手首が再びしなやかに翻ると、闇の虚空を切り裂く金色の閃光が、豪速でその人物を薙ぎ払わんとする。
 次の瞬間。
 光の刃のような金色の妖剣の切っ先を、ぶわりと黒い炎が包み込んだ。
 だが、ジェスターは怯まない。
 爛々とその緑の炎のような異形の瞳を煌かせ、黒い炎を薙ぎ払うと、両膝に重心を置いて、利き手に剣を持ったまま一気に虚空へと高く跳躍(ちょうやく)した。
 朱色の衣の長い裾が、闇に満たされた空間に乱舞して、紅蓮の炎を纏ったまま宙でしなやかに体を捻り、床に降り立った時、再び、地獄の業火にも似た黒い炎が、彼に向かって豪速で伸び上がったのである。
 その炎は、ゆらゆらと揺れながら、まるで生き物であるかのようにジェスターの引き締まった体に絡み付く。
 しかし、彼は、アクトレイドスの金色の刃を構えたまま身動ぎもしない。
ただ、その身に纏う深紅の焔を映して朱に輝く見事な栗毛の下で、厳(いかめ)しい表情(かお)のまま、黒き闇の炎の先を睨み据えただけだった。
「この俺に、こんなもんが通じるかよ・・・・?
好い加減、姿を見せたらどうだ?カイルナーガ?・・・・いや、もうおまえは、カイルじゃなかったな・・・ラグナ・ゼラキエル!!」
 空を切り裂く鋭い音を伴い、アクトレイドスの金色の刃が、紅蓮の炎を伴って闇の黒炎を薙ぎ払った。
 千々に引き千切れた炎の断片が、ふわりと虚空に舞い、ジェスターの精悍な頬に触れては消えていく。
「そうやってそなたは、また私に抗(あらが)うのだな?血と共に、宿命すら分けた兄弟であるというのに・・・・・・薄ら可笑しいわ」
 大きく伸び上がる黒い炎の中から、今、ゆっくりとその姿を現してくる、魔王と呼ばれた古の魔法使い・・・