神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>

      *
 まだ眠たそうな太陽が、天空から金色の光の断片を降らせている。
 青く晴れ渡る空から差しこむその光が、煌々(こうこう)と窓辺を照らし出していた。
 紺碧色の長い巻き髪を金の髪留めできちんと結い上げて、リタ・メタリカの勇ましくも秀麗な姫君リーヤティアは、引き締まった細い腰に細身の剣(レイピア)と、赤い刃を持つ短剣『無の三日月(マハ・ディーティア)』を差したのだった。
 そんな姫君の様子を、また、戸の隙間から三人のジプシーの少女がこそこそと覗き見ている。
「イリーネも綺麗だけど、姫君も綺麗ね?」
「姫君は戦士様だから、イリーネとは全然違うわよ」
「昨日の剣技は凄かったぁ~!」
 廊下から戸の隙間を覗き込んで、小声でそんな事を言い合う少女達の背後に、一人の長身の青年が立った。
 見事な栗毛の下から覗く、燃え盛る炎のような鮮やかな緑玉の瞳が、なにやら、呆れ返ったようにそんな彼女達の後ろ姿を見やっている。
 しかし、少女達は、彼の存在にまだ気付いていない様子・・・・
「おい、何してんだよ?お前ら?」
「きゃっ!!」
 突然、低い声が頭上から降って来て、少女達は短い悲鳴を上げると、その余りの驚きに勢い余り、そのまま部屋の中へと転げるようになだれ込んだのである。
 派手な音を立てて床に転んだ彼女達に、部屋の中にいたリーヤが、驚いて振り返る。
「あら、貴女達・・・・っ?どうしたのです?」
 晴れ渡る空の色を映したような紺碧色の瞳をきょとんと丸くして、リーヤは、緋色のマントを肩に羽織りながら、まじまじと、床の上で慌てふためく少女達の顔を見たのだった。