神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>

 燃え盛る緑の炎のような緑玉の瞳と見事な栗毛を持つ、その魔法剣士は、どこか冷淡な表情でそう呟くと、背鞘に負われた曰く有り気な金色(こんじき)の大剣を抜き払った。
 この金色の剣は、鋼よりも強固で軽い、決して人の手では加工することが出来ない未知の金属で作られている・・・
古の昔より、妖剣『告死の剣(アクトレイドス)』とも、神剣『勇者の剣(ファルーカイス)』とも呼ばれる金色の剣。
この剣が持つ膨大な魔力は、時に保持者すら死に至らしめるという、神々しくも禍々しい特異な性質を持つ魔剣であった。
そんな曰く在る剣を利き手で構え、青年の端正で凛々しい顔が、戦人の装いで凛と引き締まる。
 何の躊躇いも無しに宮殿の大きな扉を押し開くと、そこに、既に闇の者共との攻防を始めていた、よく見知った青年のローブが翻っていた。
 その肢体が幾筋もの風を纏い、蒼いオーラを虚空に乱舞させている。
 それは、他でもない、リタ・メタリカの宮廷付きの魔法使いにして、ロータス一族の大魔法使いスターレット・ノア・イクス・ロータス、その人であった。
 本来なら、銀水色であるはずの彼の両眼は、揺れる蒼銀の髪の下で神々しくも禍々しい鮮やかな紅玉色に爛と輝き、ただ、眼前で唸りを上げている、額に一角の角を持つ狼の形をした闇の魔物達を睨み据えていた。
 彼が術を使う時だけに現れるその瞳の色は、ロータス一族の中でも大魔法使いだけが持つと言われる瞳の色。 
スターレットは振り返ることなく、傍らに立った緑玉の瞳の魔法剣士に言うのである。
「随分と遅い到着だな?ジェスター?」
「昔から、王宮なんて所は嫌いなタチでね」
 まだ少年であった時から全く変わらない、相変わらずの軽口を叩いて、利き手に持った金色の大剣を前で構えると、異形の瞳の魔法剣士ジェスター・ディグは、その形の良い眉を眉間に寄せた。
燃え盛る緑の炎のような緑玉の両眼が、今まさに、獣の形をした魔物に囲まれ黒い炎の中からその姿を現そうとしている何者かを真っ向から睨み据えている。