それは、何故・・・・・・?
全て、忘れてしまったから?
私のことなど、もう・・・・
胸の奥が締め付けられるように痛い。
古の伝説にある、あの悲恋の物語のように、彼は、あのリタ・メタリカの姫君を愛しているのだろうか?
一体、どういう経緯で彼があの姫君を連れているのか、全く知るはずもないイリーネの心には、この夜の闇のようにこんこんと湧き上がる、身を焦がすような激しい感情が渦を巻いていく。・
苦しそうに綺麗な眉を寄せて、彼女は、長い琥珀の髪が頬にかかることも気にせず、ただ、両手で強く自分を抱きしめる。
ざわりと・・・・森の木々がざわめいた。
涙で霞むその瞳を、木々の合間から金色の頼りない光を降らす、薄い月に向けた時、不意に、 そんな彼女の耳の奥に、どこからともなく、まるで闇からの声のような奇妙な声が響いてきたのである。
『ならば、殺してしまえばいい・・・・そなたから、大切な者を奪った女など、殺してしまえばいいのだ・・・』
「!?」
イリーネは、驚愕して細い肩を震わせた。
綺麗な顔を恐怖に歪めて、思わず、月明かりと静寂に包み込まれる暗い森の中を、潤んだ瞳できょろきょろと見回した。
その次の瞬間。
突然、その眼前に、黒衣を纏った見知らぬ青年が姿を現したのである。
「きゃ・・・・っ」
白に近い銀色の瞳が、どこか邪な輝きを宿して爛々と輝いている。
その額に縦長に開く、もう一つの瞳。
それは、明らかに人ではない。
憎悪と恐怖にその身を強張らせ、イリーネは、悲鳴すら上げられぬまま、怯えた眼差しで、突然そこに姿を現した見知らぬ魔物を見つめすえたのだった。
全て、忘れてしまったから?
私のことなど、もう・・・・
胸の奥が締め付けられるように痛い。
古の伝説にある、あの悲恋の物語のように、彼は、あのリタ・メタリカの姫君を愛しているのだろうか?
一体、どういう経緯で彼があの姫君を連れているのか、全く知るはずもないイリーネの心には、この夜の闇のようにこんこんと湧き上がる、身を焦がすような激しい感情が渦を巻いていく。・
苦しそうに綺麗な眉を寄せて、彼女は、長い琥珀の髪が頬にかかることも気にせず、ただ、両手で強く自分を抱きしめる。
ざわりと・・・・森の木々がざわめいた。
涙で霞むその瞳を、木々の合間から金色の頼りない光を降らす、薄い月に向けた時、不意に、 そんな彼女の耳の奥に、どこからともなく、まるで闇からの声のような奇妙な声が響いてきたのである。
『ならば、殺してしまえばいい・・・・そなたから、大切な者を奪った女など、殺してしまえばいいのだ・・・』
「!?」
イリーネは、驚愕して細い肩を震わせた。
綺麗な顔を恐怖に歪めて、思わず、月明かりと静寂に包み込まれる暗い森の中を、潤んだ瞳できょろきょろと見回した。
その次の瞬間。
突然、その眼前に、黒衣を纏った見知らぬ青年が姿を現したのである。
「きゃ・・・・っ」
白に近い銀色の瞳が、どこか邪な輝きを宿して爛々と輝いている。
その額に縦長に開く、もう一つの瞳。
それは、明らかに人ではない。
憎悪と恐怖にその身を強張らせ、イリーネは、悲鳴すら上げられぬまま、怯えた眼差しで、突然そこに姿を現した見知らぬ魔物を見つめすえたのだった。


