*
そんなイリーネの姿を、遥か遠い場所から見つめていたのは、実は、金色の月だけに留まらなかったのである。
暗黒の結界に囲まれた幻の城(ロイアー・カークス)の一室で、けだるそうに長椅子に横たわっていた美しき魔性の女は、にわかに、爛とその深い青の瞳を輝かせたのだった。
黒い髪がかかるなだらかな額に浮かび上がる、紫色の炎の紋章。
それは、彼女が魔王と呼ばれる青年の配下であることを示す証である。
『あら・・・・・実に面白いですこと』
長椅子に横たわったまま、白くしなやかなその掌に大きな水晶玉を掲げ、その中に写し出された光景を見やると、美麗な魔性の女はその妖艶な赤い唇に、なにやら、ニヤニヤと性悪な微笑みを浮かべる。
あのロータスの雅な大魔法使い(ラージ・ウァスラム)とファルマス・シアの荒野で対峙して以来、時折激しく抵抗するようになった憑(よりまし)たる女剣士に苛立ちつつ、魔王の妻になるはずだった女妖レイノーラは、ゆっくりと長椅子から起き上がった。
彼女の持つ、邪眼と呼ばれる瞳にありありと映し出される、イリーネの心深くに渦巻いた、リタ・メタリカの姫君に対する激しい嫉妬の情。
その感情を、性悪な彼女が見過ごすはずもない。
『丁度、退屈していた所・・・・【鍵】にこの女をけしかけてあげようかしら・・・・
さて、弟君は、どんな顔をするかしら?
・・・・シグスレイ!』
レイノーラの声が、高らかと使い魔の名を呼んだ。
すると、どこからとも無く暗い部屋の中に現れた黒い炎が、紫の火の粉を上げて人の形に成り変わっていく。
邪な微笑みに彩られた彼女の美麗な顔。
その眼前に姿を現した、黒衣を纏った細身の青年が、恭しく頭を垂れて、ゆっくりとレイノーラの元へ御意してくる。
床に片膝を付いたまま真っ直ぐに彼女の美麗な顔を仰ぐ、禍々しく輝く白に近い銀色の両眼。
しかし、彼の持つ眼差しは、決して二つだけではない。
血色の無い白い額に縦長に開く、もう一つの瞳・・・・それは、レイノーラの持つ邪眼をそのまま受け継いだ第三の瞳であった。
そんなイリーネの姿を、遥か遠い場所から見つめていたのは、実は、金色の月だけに留まらなかったのである。
暗黒の結界に囲まれた幻の城(ロイアー・カークス)の一室で、けだるそうに長椅子に横たわっていた美しき魔性の女は、にわかに、爛とその深い青の瞳を輝かせたのだった。
黒い髪がかかるなだらかな額に浮かび上がる、紫色の炎の紋章。
それは、彼女が魔王と呼ばれる青年の配下であることを示す証である。
『あら・・・・・実に面白いですこと』
長椅子に横たわったまま、白くしなやかなその掌に大きな水晶玉を掲げ、その中に写し出された光景を見やると、美麗な魔性の女はその妖艶な赤い唇に、なにやら、ニヤニヤと性悪な微笑みを浮かべる。
あのロータスの雅な大魔法使い(ラージ・ウァスラム)とファルマス・シアの荒野で対峙して以来、時折激しく抵抗するようになった憑(よりまし)たる女剣士に苛立ちつつ、魔王の妻になるはずだった女妖レイノーラは、ゆっくりと長椅子から起き上がった。
彼女の持つ、邪眼と呼ばれる瞳にありありと映し出される、イリーネの心深くに渦巻いた、リタ・メタリカの姫君に対する激しい嫉妬の情。
その感情を、性悪な彼女が見過ごすはずもない。
『丁度、退屈していた所・・・・【鍵】にこの女をけしかけてあげようかしら・・・・
さて、弟君は、どんな顔をするかしら?
・・・・シグスレイ!』
レイノーラの声が、高らかと使い魔の名を呼んだ。
すると、どこからとも無く暗い部屋の中に現れた黒い炎が、紫の火の粉を上げて人の形に成り変わっていく。
邪な微笑みに彩られた彼女の美麗な顔。
その眼前に姿を現した、黒衣を纏った細身の青年が、恭しく頭を垂れて、ゆっくりとレイノーラの元へ御意してくる。
床に片膝を付いたまま真っ直ぐに彼女の美麗な顔を仰ぐ、禍々しく輝く白に近い銀色の両眼。
しかし、彼の持つ眼差しは、決して二つだけではない。
血色の無い白い額に縦長に開く、もう一つの瞳・・・・それは、レイノーラの持つ邪眼をそのまま受け継いだ第三の瞳であった。


