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黒絹の夜空に、薄く頼りない月が金色に輝き出した頃、大街道銀楼の道(エルッセル)沿いの小さな村ランドルーラにある、一番大きなその宿の中は、にわかに騒々しく動き出していた。
「リタ・メタリカの姫君ですって・・・!」
「え?ほんとに・・・?何でそのような方が此処に!?」
「しっ!静かに・・・・っ」
ひそひそと聞こえてくるジプシーの少女達の声に、リーヤティアは、胡桃の椅子に腰を下ろしたまま、きょとんとした顔つきをすると、その晴れ渡る空を映した紺碧色の瞳を、ちらりと戸口に向けたのである。
驚いたように肩を震わせて、少女達は、巣穴に駆け込む子兎のように、ハッと扉の向こうに顔を隠してしまった。
その様子が可笑しかったのか、彼女は、綺麗な桜色の唇で小さく笑いを噴き出したのである。
「こらっ、おまえ達!姫君に失礼だぞ、向こうへ行っていなさい!」
少女達がこそこそと覗いている戸口に向かってそう言ったのは、先刻盗賊どもに襲われていたあのジプシーの一団の頭である、パルヴィス・ローディという名の中年男性であった。
頭である彼の声に、慌てて、少女達が戸口から逃げ去っていく。
パルヴィスは、実に申し訳なさそうな顔をして、目の前にいる、リタ・メタリカの高貴な姫君の綺麗な顔を、緊張した面持ちでまじまじと見やるのだった。
「も、申し訳ありません!躾の行き届かぬ子達で!あの・・・・・」
「いいえ、そんなことはありせん。元気で可愛らしい子達ではないですか?」
「そ、そう言っていただけると、た、助かります」
おどおどしながら頭を垂れたパルヴィスに、リーヤは、穏やかな表情をして、ごく自然に微笑んで見せたのである。
一介のジプシーが、まさかこのような所で、リタ・メタリカの高貴な姫君に遭遇し、しかも、命まで救ってもらえる事になろうとは、思ってもいなかったのであろう。
黒絹の夜空に、薄く頼りない月が金色に輝き出した頃、大街道銀楼の道(エルッセル)沿いの小さな村ランドルーラにある、一番大きなその宿の中は、にわかに騒々しく動き出していた。
「リタ・メタリカの姫君ですって・・・!」
「え?ほんとに・・・?何でそのような方が此処に!?」
「しっ!静かに・・・・っ」
ひそひそと聞こえてくるジプシーの少女達の声に、リーヤティアは、胡桃の椅子に腰を下ろしたまま、きょとんとした顔つきをすると、その晴れ渡る空を映した紺碧色の瞳を、ちらりと戸口に向けたのである。
驚いたように肩を震わせて、少女達は、巣穴に駆け込む子兎のように、ハッと扉の向こうに顔を隠してしまった。
その様子が可笑しかったのか、彼女は、綺麗な桜色の唇で小さく笑いを噴き出したのである。
「こらっ、おまえ達!姫君に失礼だぞ、向こうへ行っていなさい!」
少女達がこそこそと覗いている戸口に向かってそう言ったのは、先刻盗賊どもに襲われていたあのジプシーの一団の頭である、パルヴィス・ローディという名の中年男性であった。
頭である彼の声に、慌てて、少女達が戸口から逃げ去っていく。
パルヴィスは、実に申し訳なさそうな顔をして、目の前にいる、リタ・メタリカの高貴な姫君の綺麗な顔を、緊張した面持ちでまじまじと見やるのだった。
「も、申し訳ありません!躾の行き届かぬ子達で!あの・・・・・」
「いいえ、そんなことはありせん。元気で可愛らしい子達ではないですか?」
「そ、そう言っていただけると、た、助かります」
おどおどしながら頭を垂れたパルヴィスに、リーヤは、穏やかな表情をして、ごく自然に微笑んで見せたのである。
一介のジプシーが、まさかこのような所で、リタ・メタリカの高貴な姫君に遭遇し、しかも、命まで救ってもらえる事になろうとは、思ってもいなかったのであろう。


