初恋 ~頑張る女子と俺様上司の攻防戦~

「それで、龍之介はどうするつもりなの?」
お母様はあくまでも淡々と、話を聞こうとしてくださる。

「婚約は白紙に戻していただきます」
「それは、今の会社を辞めてお父様の後を継ぐって意味なのね?」
「イヤ、それは・・・」
「あら、それが条件だったでしょ?好きなことをするなら、結婚はお父様のいうことを聞くって」
龍之介が黙り込んだ。

「仕方がないわねパパ。ママとの結婚に失敗した時点でおじいさまの逆鱗に触れたんだから、素直にお見合い結婚するか、おじいさまの後を継ぐかしかないのよ」
中学生らしからぬことを言う樹里ちゃん。

「樹里、お前は黙っていなさい」
さすがに父親らしく、一喝した龍之介だが、
「なんでよ。事実でしょ?パパが学生時代に一夏の恋なんてするから、私が生まれて、日本語も話せないママは無理矢理日本へ連れてこられた。どうしても生活になじめないママは、仕事が忙しくてかまってもくれないパパを恨みながら自分で命を絶ったんじゃない。何か間違っているの?」
樹里ちゃんは負けていない。