“戦争を後世へ伝える羽ばたく鳥として「広島」は「ヒロシマ」に、「長崎」は「ナガサキ」になった。日本の犯した過ちを教訓に、世界を平和に導くために…。”

「カタカナって、こんな意味があったんだね」
那央が言った。
「世界か…。私もそんな心の大きい人になりたい」
私は空を眺めて呟く。
「なれるよ」
空気を切るような凛とした声がして那央の方を向くと、太陽みたいな優しい笑顔で笑っていた。
「うん」
私も笑って頷いた。

それはもう、5年も前の話。教科書に載っていた、模範回答。
あんな完璧な文章が書けたなら。

こんなことにはならなかった。