演奏しながら先生の顔を見る。
もう譜面なんて強弱記号も、音符の並びも、完璧に覚えていた。
そのくらい、毎日毎日練習した。

北中は東関東大会の常連だった。直近5年間連続で出場していた。もちろん、私たちの代はもう2回出場している。
だが、毎年「今年こそは」と金賞を狙い全国を目指すものの、いつもダメ金止まりだった。

今年の北中は、出番こそ1番最初だったけど、緊張なんて全くしないくらい自信しかなかった。
私達は確実にこの地区大会を通過して、県大会も余裕で通過できる。
だって、あんなにたくさん練習したんだから。

そう考えていた。

木管の主旋律が終わり、それがトランペットに受け継がれる。
その瞬間、トランペットが主旋律のフレーズが、不意に崩れた。高音を外し、その反動でメロディーが崩れる。取り繕えないほどに楽器から音が逃げていく。それはほかの楽器までにも広がって、いつの間にか、北中の音楽はぼろぼろと崩れていた。

なんとか演奏を終え、一斉に起立し、指揮の先生が客席に向かって礼をした。
客席から聞こえてきた拍手の音は、1年生、2年生のときに聞いたようなものではなかった。「あれ北中だよね..?」「どうしたんだろう」なんて声も聞こえてきた。

今すぐにでも舞台から消えたかった。
こんなはずじゃなかったのに。

トランペットだった同級生は、声を上げることなく楽器を片付けながら1人泣いていた。「大丈夫だよ」なんて言えるわけもないし、実際大丈夫ではなかった。

誰一人口を開くことなく、黙々と楽器を片付けた。すすり泣く声が聞こえ、釣られるように涙が溢れそうになる。

結果、私達は下から数えた方が早い順位だった。
当たり前のように落選。

私の中学最後のコンクールは、最悪な形で終わった。後悔しかなくて、高校に入ったら必ずもう一度東関東にいって、金賞をとって、全国に出場しよう。そう決めた。