「ねぇ、ミツキ。開けて見てもいいかしら?」
 「あぁ。たぶん、俺が説明しないとわからないと思うし。」
 「そうなの?………じぁあ。」


 不思議に思いながらも、エルハムはその袋から入っていた物を取り出した。
 すると、中から花柄の刺繍と布でできた小さな袋が入っていた。


 「わぁ………ハンカチ可愛いわね。………それと、これは?」
 「それは日本のお守りってものだ。」


 少し古びているが鮮やかな色の生地は、シトロン国では見たことがない物だった。


 「金色の糸で刺繍されてるのね。すごく細かいけど、綺麗だわ。」
 「金襴布地っていうらしい。こっちの世界ではないものだな。そして、その中にはお札が入ってんだけど、神様っていうみんなを守ってくれる偉い人がいるって言われてるから、開けちゃだめだぞ。」
 「………偉い人が守ってくれる………から、「お守り」なの?」


 エルハムは、手のひらにあるキラキラ光る小さなお守りを見つめながら、そう彼に問いかけると、「そうだ。」と教えてくれた。


 「ニホンでは、このお守りを持っていると安全だとか幸せになれるとか、お金が入るとか………そういうのがあるんだ。これを持ってると安全になれるおまじないってやつだ。俺が持ってたんだけど、少し擦りきれてたから縫い直した。だから、さっきの人に裁縫道具を借りたり、縫い方を教えて貰ったんだ。」
 「………そうだったの………。」


 ミツキから、使用人である女の子との関係が思いもよらない所でわかり、エルハムは思わずホッとしてしまった。裁縫道具など持っていない彼が頼んだのが、部屋の支度などをしてくれる使用人だったようだ。たまたま、その上手なの女の子が裁縫が得意だったことから、ミツキが詳しく聞いたという事だった。