自分に言い聞かせるように、一人ブツブツと呟きながらセリムはミツキに会いに行った。

 部屋に近づくと、また偶然の出来事と遭遇してしまう。何故、このタイミングに出会ってしまうのか、エルハムは自分の不運にうんざりとしてしまう。

 目の前に居たのは、ミツキと前に彼といっしょに居た使用人の女が居たのだ。
 ミツキの部屋のドアを開けて何か話していた。

 ………もしかして、彼女はミツキの部屋から出てきたのだろうか。
 そんな風に思ってしまった。

 やはり彼女はミツキの大切な人。
 自分も入ったことのない彼の部屋に入っていたのだ。
 
 いいな………。
 そんな風思ってしまった自分の気持ちに気づいて、エルハムはカッと顔を真っ赤にさせた。

 この思いは使用人の女の子に対する嫉妬だ。
 それを理解した瞬間、自分がどんな気持ちを持っているのか。もう気づかないわけにはいかなかった。

 私は、ミツキの事を…………。


 「あら。エルハム様?」


 呆然とそんな事を考えていると、エルハムに気づいた使用人の女が声を掛けてきた。
 そして、話をしていたミツキもこちらに気づき「姫様。どうして、こんなところに?」と、驚いた表情だった。


 「えっと………私は、仕事の用事で…………。」
 「ミツキ様にご用事ですか?すみませんでた、エルハム様。私はもうお話は済みましたので。」
 「えっ………いいのよ。私が、後で出直せばいいのだから。」


 エルハムは焦りながら使用人にそう言ったけれど、「エルハム様、失礼致します。」と頭を下げた後、すぐに廊下を歩いて行ってしまった。


 「姫様、お待たせしてすみません。何のご用事でしたか?」
 「あ、うん……この書簡をあなたに渡したくて。」
 「あぁ……ありがとうございます。わざわざ来てもらって、申し訳ないです。」