「セイはどうだった?」
部屋に戻り、ミツキはエルハムをベットに下ろそうとしたけれど、まだ太陽が昇っている時間だ。エルハムは、部屋に入るとすぐに彼に下ろしてもらった。本当ならば、直ぐにでも下りたいぐらいに恥ずかしかったけれど、ミツキは「ここまで来たら最後まで行きますよ。」と言って抱き上げたエルハムを離してくれなかったのだ。
エルハムはホッとしながらも、彼のぬくもりが消え、少し寂しく感じていた。それは、昔の事を思い出していたからなのか、別の理由なのか。エルハムは、考えないようにしながら、ミツキの問いかけに答えた。
「相変わらず、反応はないわ。言葉も足音さえも聞こえない。……大丈夫かしら?」
「食事は少しだけど食べてるみたいだな。でも、そう簡単に心は治らないだろう。」
「そうよね……。ゆっくり見守っていくわ。」
エルハムはそう答えると、ミツキが持っていた裁縫セットを受け取った。
「ありがとう。それ持っててくれたのよね。」
「……あぁ。また、刺繍してるんだな。」
「プレゼント用なんだ。」
「…………。」