そんな事を考え、ついニコニコして廊下を歩いしまっていた。何故、こんなにも嬉しいのかわからないけれど、自分が笑顔になれた事はよかったと思っていた。
 
 セイの事件とコメットの奇襲。
 それにより、エルハムの心はどん底に落とされそうになっていた。それを救ってくれたのは、一番近くに居てくれたミツキだと、エルハムはわかっていた。
 彼には感謝してもしきれないぐらいの恩が沢山あるのだ。

 
 「………それにしても、ミツキいないわね。どこに行ったのかしら。」
 

 そんな事を一人呟いていると、どこからか誰かの喋り声が聞こえた。その声がミツキだとわかると、エルハムはそちらの方へと向かった。

 すると、倉庫のドアの前でミツキを見つけた。思わず駆け寄ろうと思ったけれど、ミツキは彼と同じぐらいの若い使用人と楽しそうに何か話していた。
 そして、ミツキは小さな紙の袋を大切そうに持っていたのだ。


 「…………。」


 エルハムは、彼の笑い顔を見て、胸がキリッと痛み、そして、晴れていた気持ちが一気に雲っていくのがわかり顔をしかめた。


 「…………私の前じゃなくても笑うのね………。」


 ポロリと口からでた、本音の言葉。
 その言葉に自分でも驚いたエルハムは、両手で口元を押さえて、顔を真っ赤にした。