怖いと思ってしまうと、なかなか見方を変えられるものではない。そして、母のように自分が何をすれば人々に喜んでもらえるのかわからないエルハムは不安でしかなかった。

 けれど、ティティーは飛びきりの笑顔で、エルハムに言った。

 「エルハムには出来るわ。なんたって、私の自慢の娘なんだからっ!」
 「お母様………。」

 大好きな母からの誉められ、激励される。
 それがエルハムにとって、一番力になる言葉だった。
 
 まずは、いつも優しくしてくれたみんなを信じよう。たった一度、怖い顔をされて勘違いで迷い戸惑って反乱を起こそうとしているだけなのだ。昔からずっとエルハムを見守り、成長を喜んでくれたのは両親と城の人、そしてシトロン国のみんなだった。
 そんな人達を信じないなんて、少し考えればおかしなことだ。

 まずは母が言った事を信じて、笑顔で過ごし、そして信じよう。
 エルハムはそう決めた。

 「お母様。やはり私もついて行っていいですか?」
 「えぇ!もちろんよ。それなら、セリムにも来て貰いましょうね。」

 エルハムがしっかりと前を向いた事に、母が喜んでくれたのがエルハムにはわかった。





 けれど、事件は無惨にも起こってしまう。