そんなある日。
 ティティーが病院での歌のお披露目の公務があり、出掛ける事になっていた。それに同行する予定だったエルハムは、危険だという事で見送られる予定だった。

 その日の朝、ティティーは準備をした後にエルハムの部屋にやって来たのだ。


 「エルハム。出掛けてくるわね。」
 「………お母様。お母様が一番危険なのだから、お休みなさってはいかがですか?」
 「………エルハムは、シトロンの人達が怖い?」


 ティティーはエルハムを優しく抱き締めながら、優しく答えた。白い細身のドレスを着て、綺麗に化粧をした母は、とても美しくまるでラズワルト国にいると言われる妖精のようだった。ティティーは花のような香りがして、エルハムは母に抱きしめられるのがとても好きだった。

 母の問いかけに、エルハムは正直に頭を縦に振って肯定をした。すると、ティティーは「そう。」と言って頭を撫でてくれる。


 「エルハム。みんな、何を信じていいかわならないで不安なだけなの。だから、私たちからみんなを信じなければダメよ。きっと、わかってくれる、と。………私たちは、シトロンの皆を笑顔にするために居るのだから。」
 「………でも、みんな怖い顔をしているわ。そして、お母様を悪者だと言っている。本当の事じゃないのに、どうしてわかってくれないの?」
 「大丈夫よ。……きっとわかってくれる。私たちが笑顔で語りかければ、きっと……。だから、信じましょう。そして、いつも通りに私たちはみんなの笑顔を作っていくために努めるのよ。」
 「………私に出来るかな、お母様。」