「………。」
 「エルハム様、そして騎士団の皆様。少しよろしいですか?」
 
 そう言って声をかけてくれたのは、セイと同じ赤髪で、少しふっくらとした体型の女性だった。セイの母親だ。
 セイの母は、セイに店番を頼むとエルハムとセリム、そして数人の騎士団長を店の奥へと案内した。


 「おば様。どうしたの?何か相談事かしら?」
 「…………少し話しにくいお話なのですが……。城の人達に聞いてもらいたい事があるのです。」


 セイの母親は心苦しそうに顔をしかめながら、小声で話しをしてくれた。
 それは、エルハムにも騎士団員にとっても驚愕の話だった。



 「実は数日前から妙な噂が流れているのです。ティティー王妃様が、自分勝手に物を買い、国のお金で豪遊している、と。そして、その……姫様の前では言わない方が良いのかもと思ったんですが……、夜になると遊び歩いてると。」
 「…………そ、そんな事っ!お母様は贅沢なんかしないわ。むしろ、質素に生活しているぐらいなのに……。」

 セイの母から出た言葉は、信じられない話だった。真実とは全く違う噂が流れている。それが許せなく、エルハムはつい大きな声を上げてしまう。
 そんなエルハムをなだめるように、セイの母は頷き、エルハムに優しく微笑みかけた。