「姫様。どうしましたか?」
 

 小声で話すミツキをエルハムは部屋に入るように促した。
 ミツキは少し戸惑いながらも、部屋に入ってくれたのだ。


 「ごめんなさい………。寝ていたのに起こしてしまったわね。」
 「いえ。久しぶりなので驚きましたが。体調は良くなりましたか?」
 「ええ。先程よりは。……心配かけたわね。でも、合図を送ってあなたを呼ぶのが懐かしくて、何だか嬉しくなったわ。」 


 エルハムは、微笑を浮かべながらミツキにそう言うと、ミツキは安心した様子で目を細めた。

 エルハムとミツキが、まだ出会ったばかりの頃。
 エルハムは彼とニホンの話をし足りない時や眠れない時、そして今回のように怖い夢を見た時に彼を呼んでいたのだ。
 夜中にこっそりといつもの椅子に座って勉強をしていた事があり、その次の日にミツキに「夜中まで何をしてたんですか?」と聞かれたのだ。あの場所は彼の部屋のベットの上にあるようで、寝ているミツキが物音を聞いて心配したようだった。
 その事を聞いてから、エルハムは彼を呼ぶ時はそこの床をノックしていたのだ。
 ミツキは困った顔をしながらも、話しを聞いたり、エルハムが眠るまで傍に居てくれた。
 年下の男の子に甘えるのは少し恥ずかしかったけれど、ミツキだから甘えられる。そう思ってしまうのだった。


 「倒れた後なのです。俺はまだここにいますから、ベットに横になっていてください。」
 「………そうするわ。」
 

 ミツキに促されて、エルハムはベットに横になった。ミツキはいつもの椅子をベットの脇に置き座る。これも昔と同じだった。