「姫様っ!」
 「エルハム様!?」


 ミツキとセリムはすぐに彼女の元へ駆け寄った。近くにいたミツキが体を支え、そしてセリムはエルハムの近くに座り彼女の表情を心配そうに確認した。
 エルハムは顔が真っ青になっており、体が震えていたのだ。


 「姫様、どうしたのですか?体調が悪いのですか?」
 「………ご、ごめんなさい。なんか急にフラフラしてしまって。疲れてしまったのかしら。」
 「エルハム様………。」


 エルハムはフラついてしまう体を、ミツキに支えられながらなんとかベットの端に腰を下ろした。
 ミツキは心配そうに、エルハムを見つめていた。
 

 「ミツキ、そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫よ。それにセリムも。私はもう幼い頃の私じゃないの。それに、あなた達が守ってくれるのだから。そうでしょ?」
 「…………姫様。」


 ミツキはエルハムの言葉の意味がわからないようで少し戸惑っていた。それはミツキが彼女の幼い頃を知らないからに他ならない。
 返事も出来ないミツキに変わって、セリムが優しくエルハムに語り掛けた。


 「えぇ。必ずお守りします。なので、今は無理はなさらずに。さぁ、横になって……お休みください。」
 「ありがとう。そうするわ。」


 セリムに促されて、エルハムは女の使用人を呼んだ。ドレスを着替えようと思ったのだ。

 それを見て、ミツキは不安そうにしながらエルハムを見つめていたが、エルハムは小さく微笑んで彼らを見送ったのだった。


 着替えをしてから、エルハムはすぐにベットに横になった。
 めまいと震えが治まらないのだ。


 「………ここまで自分が怖がりだと思わなかったわ。………まだあの日のことを忘れられないなんて。」


 エルハムは大きなベットで一人体を抱き締め、ギュッと目を閉じながら、眠気が来るのを待った。