異世界から来たという謎の少年という事で、ミツキは初め、城の人たちや国の人々、そして騎士団でもあまり良く思われていなかった。けれど、ミツキの性格や働き方を見て、みんな彼を認めて国の一員として見ていた。セリムも騎士団員としては彼を認めているようだったが、専属騎士という立場はミツキに相応しくないと思っているようだった。
 セリムは専属騎士という名前はなかったものの、騎士団で一番腕の立つ騎士だったため、いつもエルハムの護衛をしてくれていた。そのため、ミツキにその立場を取られたと思っているようだった。何度か「騎士団長としての仕事と専属騎士の2つの仕事は大変だから、ミツキにお願いしたのよ。」と、エルハムがさりげなくフォローをしたけれど、「エルハム様との時間が負担になる事などありませんでした。」と言って聞いてはくれなかったのだ。

 エルハムは困った顔でセリムを見ながら、彼に声を掛けた。


 「セリム、どうしたの?その顔は……何かあったのでしょう?」
 「はい。………先ほど、セイの事件の事を聞きました。エルハム様が無事で何よりでした。」
 「お父様からお話があったのね。セイは大丈夫?」
 「はい。騎士団が彼女の部屋の見張りをする事になっております。家の青果店の方は休業し、そちらにも騎士団が見守る事になりました。」
 「そう。それなら安心ね。」


 セイの身辺の警護を聞いて、エルハムはホッと息を吐いた。けれど、襲ってきた人達は、とても残虐だ。どんな事をするかわからないのは不安でもあった。


 「騎士団の皆さんも気を付けてくださいね。決して一人では行動しないで。」
 「お心遣いありがとうございます。すでにアオレン様からもそう言われておりました。それと………もう1つお話ししたいことがあります。」
 「何かしら。」


 セリムは、そう言った後、躊躇うように間を置いたのだ。エルハムに言いにくいようで、セリムを緊迫した表情のままエルハムを見つめた後、ゆっくりと言葉を紡いだ。


 「セイの両親を殺害し、セイにも危害や脅しを行ったのは、黒服の男の集団だと話していたそうですね。」
 「ええ、そうね。」
 「アオレン様も話を聞いたときに、すぐにわかったそうですが、セイも動揺すると思い何も言わなかったそうで………私もその話しを聞いてすぐに誰かわかりました。」
 「そうだったの?!では………。」