第11話「守りたい」





 エルハムは自室に戻り、窓際の椅子に座り呆然と中庭を見つめていた。
 ここは昔から、ミツキと勉強を教え合っている場所。懐かしくも大切な場所だ。
 けれど、今はそれを懐かしく思い出しているわけではなかった。


 先ほどの、セイの事件でのアオレン王との謁見。
 自分はセイに謝罪させるだけさせて、彼女を安心させる言葉1つも掛けてあげられなかった。目の前には、両親を亡くし傷ついているセイ。
 エルハムはセイを友達だと思って大切にしていたはずだった。そんな彼女が直ぐそこで泣いているのに、声を掛けることすら出来なかった。


 「こんなので、笑顔にさせる事なんて出来るのかしら?」


 溜め息まじりの言葉を吐きながら、また中庭を眺める。通年で色とりどりの花が咲くシトロンの城の庭はとても美しかった。けれど、それを見ても今のエルハムの心は晴れる事はなかった。


 コンコンッ。
 どんよりとした雰囲気の部屋にノックする音が響いた。
 その音を聞いて、エルハムはすぐに椅子から立ち上がりドアに駆け寄った。返事をするよりも早く、エルハムはドアを勢いよく開けた。


 「っっ………姫様。いらっしゃったのですね。遅くなってしまい、すみませんでした。」


 そこに居たのは、いつもの騎士団の正装ではない、ラフな格好をしたミツキがいた。半袖の右の二の腕は白い包帯でぐるぐる巻きにされていた。

 返事もなく突然開いたドアに驚きながらも、ミツキはゆっくりと頭を下げた。