「エルハム様、本当に申し訳ございませんでした。」
「セイ…………。私は………。」
エルハムは泣いている彼女に何と声を掛ければいいのか。わからないまま、開いたままの口は、ゆっくりと閉じていくだけだった。
セイは、脅されてエルハムやミツキを襲ったのだ。両親を目の前で殺され、そして自分自身も傷つけられ、エルハムを殺さなければ自分も殺されると言われた。
誰にも相談する事もできず、一人で悩み苦しみ、そして死に怯えていた。
彼女には何の悪さもない。
エルハムはそう思っていた。
けれど、エルハムは一国の姫なのだ。
姫を奇襲し傷つけようとした。その罪はとても大きく、何の罰を与えずに終わらせていいのか。エルハムにはわからなかった。
「大丈夫よ。気にしないで。」「両親がなくなって辛かったわね。」そんな言葉を掛ければいいのだとわかっていた。けれど、セイを見るとどの言葉もちっぽけに思え、そして、彼女を、再び笑顔にする事など出来ないのではないか。
そう思ってしまうのだった。
何も言えなくなったエルハムの代わりに、アオレン王がゆっくりとセイに声を掛けた。
その声は堂々としていたけれど、とても慈愛に満ちた物だった。
「それでは、セイ。おまえに罰を与えよう。しばらくの間、青果店を休業する事。そして、その代わりにこの城での仕事を努める事。以上である。………それでいいな、セイ。」
「っっ!!……………ありがとうございます。本当にありがとうございます。アオレン王様、エルハム様。」
セイは肩の力がすっと抜け、安心した表情を見せながらもボロボロと涙を溢して頭を下げた。
アオレン王は、セイを城で守り、罪は城で仕事をする事とし彼女を守ったのだった。