が、その果物は勢いよく弾き跳ばされて、赤と白の煉瓦道に落ちてぐちゃりと割れた。
 原因は、ミツキだった。
 彼がエルハムが受けとる前に、手で振り落としたのだ。

 「っっ!!」
 「ミ、ミツキっ!!あなた、何をしてっ……。」
 「姫様、離れてください。あの果物には毒が仕込まれています。」
 「えっ………。」

 ミツキの言葉を聞いて、エルハムは咄嗟に地面に落ちた青い果物を見た。割れた側面から、白い果肉が見えた。けれど、ところどころ黒色に腐敗している部分があるのに気づいた。それは明らかにおかしな色だった。

 「毒なんて、どうしてこの果物に………。」
 「それと、そこの女。片手で隠している物を出せ。」
 「な、何を言ってるのですか、ミツキ様。私は何も持っていませんし、毒だなんて……。」

 ミツキは、自分の後ろにエルハムを置いた。そして、目の前のセイに向かって、鋭い視線をおくっていた。そして、口調もいつもより厳しい。
 ミツキは何かを感じ取っているようだった。


 「………あなたに攻撃をしたくはありません。早く訳を話してください。そうしないと、拘束することになります。」
 「…………そんな……。」
 「…………。」
 
 セイは顔を真っ青にさせたままセイとエルハムを見た。体も小刻みに震えているのがよく見えた。
 エルハムは何が起こったのかわからず、震え上がる彼女を見て、近づこうと手を伸ばした。

 「セイ、どうしたの?……大丈夫?」
 「姫様、危ないですっ。下がって……。」

 ミツキの視線が、動いてしまったエルハムの方に向いた一瞬だった。
 セイは、隠し持っていた短剣を持って、ミツキに切りかかったのだ。



 エルハムの目の前で、ミツキの体から真っ赤な血が出る瞬間を見て、エルハムは声にならない悲鳴を上げた。