「今日はご両親はご不在なの?」
 「え、えぇ……。今は別のところで仕事がありまして。」
 「そうなの。セイが一人で店番をするなんて珍しいわね。忙しいのにすごいわね。」

 セイの店はいつも客がひっきりなしに来ている。そのため、両親のどちらかが必ずいるのだが、今日はセイ一人のようだ。仕事が大変なのだなと、エルハムは彼女を感心した目で見つめながらそう言った。
 けれど、セイは少しも嬉しそうにせず、戸惑っている様子だった。

 「今日も綺麗な果物が沢山あるのね。」

 色とりどりの果物を眺めながら、エルハムは目についた柑橘系の果物を手に取ろうとした。
 
 「あ、エルハム様!………この新しい果物はいかがですか?今まで売ったことがないのですが、甘くておいしいのです。」
 「わぁ……初めて見る物ね。海みたいに綺麗な青色……。」

 セイが差し出したのは、手のひらに収まるぐらいの丸い青色をした果物だった。艶がある皮が太陽の光りを浴びてキラキラと光っている。その様子は海の水面のようだった。
 あまりの美しさに、エルハムはうっとりしながら、セイからその果物を取ろうとした。