「この国では、約束をするとに2人で優しく抱きしめ合って約束を交わす事があるの。お互いの鼓動を聞いて、その音と共に約束も忘れないって意味らしいわ。」
 「………抱きしめあう………。」
 「そうよ。だから、はい、ミツキ。ぎゅーってしましょう。」
 「………………。」


 怪訝な表情を見せたミツキは、またしばらく固まってしまった。
 やはりミツキの居た国では、このような習慣はなかったようだ。エルハムは、別の深い意味があるのかと思い、やらなくてもいいよ。と言うつもりだった。
 けれど、エルハムが座っている椅子の前に、ミツキはゆっくりと歩いてきた。内心、ミツキが抱きしめられに来たのには、エルハムは驚いてしまったが、エルハムも椅子から立ち上がりミツキを優しく抱きしめた。


 「これで約束完了ね。」
 「………エルハム。もう1つ約束してもいいか?」
 「……何かしら?」


 ミツキに初めて名前を呼ばれた事にドキリとしながらも、エルハムは何とか返事を返した。彼が何を約束したいのか。エルハムは全く検討もつかなかった。