「………っっ………!!」
「………………………ミツキ……?」
気づくと、エルハムに抱き締められていた。
力強く、これ以上離れないようにするかのように、ミツキの体がエルハムにぴったりと触れていたのだ。
エルハムは、ミツキに抱きしめられ事で、また気持ちが溢れてきた。
彼を感じると、素直になってしまう。
大切なミツキと居ると、姫ではなくただの女になってしまう。そんな気がしていた。
「…………怖かったの………。本当にすごく怖かった。コメットの所に行くのも、あの男と一緒に居るのも。殺されるのも。………あの男に抱かれてしまうのも。」
「…………くっ…………。」
「でも、1番怖かったのは、ミツキと離れてしまうこと。ミツキが目の前から居なくなっちゃうこと。あなたが日本に帰るのが1番だとわかっていたのに。………やっぱり、私は忘れられるはずなかった。私、ミツキが…………。」
「好きだ…………おまえの事が。」
「……………ぇ。」
ミツキの言葉が耳が入った瞬間。周りの音が全て消えた。ミツキの言葉や呼吸、鼓動しか聞こえなくなっていた。
「姫だからとか、守らなくてはいない人だからとか、そんな事を抜きにしても、俺がおまえから離れたくないと思ったんだ。エルハムに笑っていて欲しい。泣かないで、いつも俺に微笑みかけて欲しい。………自分だけを見ていて欲しい。だから、エルハムを守りたい。そう思った。」
「………うそ………、そんな事……。」
「嘘じゃない。」
ミツキはゆっくりと体を離し、エルハムの顔を見つめた。
エルハムの瞳からは、いつからなのか涙がポロポロと流れていた。
それが、悲しみや苦しみからではない事ぐらい、ミツキにはわかっていた。
エルハムの顔を見つめて、ミツキはニッコリと微笑んだ。澄んだミツキの黒い瞳には、泣き顔の自分が見えた。
今、こんなにも近くに彼が居る。その事がとても幸せで、そして彼の言葉がとても嬉しかった。
「エルハム、愛してる。おまえをずっと守りたい。だから、お前の傍に居させてくれ。」
ミツキの頬が赤く染まっている。
エルハムはその様子を見て、言葉の意味をようやく理解できた。
涙は更に流れだし、エルハムは言葉を詰まらせながら、ミツキの頬に片手を伸ばした。
「私もミツキが大好き……。好きなの………ずっとずっと抱き締めていて欲しい。」
「俺もだよ。」