「では、私達は公務に戻る。………ミツキ、お前はエルハムを1日護衛しているのだぞ。コメットの残党がいつ襲ってくるかわからん。今日は、この部屋で護衛してくれ。」
 「………え………。」
 「かしこまりました。」


 エルハムが驚いている間に、ミツキは頭を下げて、アオレン王に返事をしてしまっていた。
 そして、理解する暇もなく、アオレン王やセリム、セイ達は微笑みながら部屋を出て行ってしまった。

 バタンッとドアが閉まる。
 この部屋にはエルハムとミツキの2人きり。
 部屋の中は静かになる。

 薄手のカーテンが閉められているが、外はシトロン国らしい晴天が見えた。
 長い間寝てしまっていたのか、もう昼過ぎなっていた。

 ミツキが頭を上げて、エルハムの方を向いた。
 エルハムはドキリッとしてしまう。けれど、ミツキには話さなければいけない事が沢山あった。
 エルハムは、ミツキの顔をジッと見つめて、気持ちを口にした。


 「ミツキ………助けてくれて、ありがとう。そして、勝手に城からいなくなってしまって……ごめんなさい。コメットの拠点に自分から行くなんてバカな事かもしれないけど、どうしても本が欲しかったの。コメットの男が本の続きを持ってたから…………。それに、ミツキには日本に守りたい人がいるって思ってたから。ここにいるより安全だし、幸せなのかと思っていたの。私………ミツキには幸せになってほしいって思ってたから。」


 1度気持ちを口にすると、もう止まらなかった。
 1人でずっと悩んでいた事。コメットに捕まってずっと怖かった事。ミツキが苦しんでいるのが耐えられなかった事。

 それを彼に知って欲しかった。
 大切なミツキに。
 

 聞いて欲しかった。
 自分の気持ちを。