姫としての権利や地位を奪われる覚悟もあった。しかし、エルハムは後悔などしていなかった。
 ミツキを守りたい気持ちは、今でも変わることがないのだから。


 「…………だが、1人の人間として、おまえがやった事を私は誇ろう。」
 「え……。」
 「ミツキのために行動したのだろう。1人の民のために動く。その心は、大切な物だ。………エルハム、おまえは私や王妃の自慢の娘だ。」
 「お父様…………。」


 驚いた顔でアオレンを見つめると、アオレンは困った顔を見せながら微笑んでいた。


 「………だが、心配はさせないでくれ。おまえまで失ってしまったら、私は悲しみで死んでしまう。」
 「…………お父様。………本当にごめんなさい。………ありがとうございます。」


 エルハムは、頭を下げながら何度も謝ると、アオレンはエルハムの頭を優しく撫でた。
 父の大きな手に包まれていると、「家に帰ってこれた。」、そんな安心感を感じられた。


 「だが、姫としては許されない事をしてしまったのは確か。よって、しばらくは公務から離す事とする。」
 「はい。」
 「チャロアイト国には謝罪をするように。………まぁ、エルハムが囮になり、コメットの組織を捕まえることが出来たと、チャロアイト国王は驚き、喜んでいたがな。」
 「え…………。」
 「それと、公務が休みの間、セイの店の再建の手伝いをする事とする。」
 「…………ありがとうございます。」


 処分をすると言っても、それはエルハムにとってはありがたい内容だった。
 寛大な王の優しさに感謝しながら、エルハムはもう一度深く頭を下げた。

 それと、アオレン王から聞いたチャロアイト国についても、大事に放っていないようで安心した。チャロアイト国には謝罪をしても許してもらえる内容ではないと思っていたのだ。
 それぐらい、コメットという組織には国も手を焼いていたという事だろう。

 エルハムは小さく息を吐いてホッとしていた。