「エルハム…………遅くなっても悪い。大丈夫じゃない、よな………。」
ミツキは、コメットの男から視線を逸らさず、相手に剣先を向けたままエルハムに謝罪の言葉を掛けた。
それは自分自身が傷ついたように、弱々しい声だった。
けれど、後ろ姿はとても逞しく、そしてそれを見るだけで、想いが込み上げてきて、エルハムは彼に手を伸ばした。
けれど手枷のせいで彼に触れる事は出来ない。
「ミツキ………どうしてここへ………日本に戻ってって言ったのに。」
「俺は戻らない。ここに残る。」
「え…………。」
「誰かを守りたいと思っていた。それが誰なのか、わからないまま力を求めていた。けど、わかったんだよ、やっと。」
「…………。」
「俺はお前を守りたいんだよ、エルハム。」
ミツキの言葉は、エルハムが死を覚悟し、そしてミツキとの別れを予測し悲しんでいた心をスッと温めてくれた。
目の前に愛しい人が居る。
そして、自分を助けに来てくれた。
守りたいと言ってくれた。
…………いなくならないと、言ってくれた。
こんな危機的な状態だというのに、エルハムは幸せで仕方がなかった。
コメットの拠点に捕らえられ、目の前には魔法を使う敵がいる。
そして、味方はミツキだけ。
そんな最悪な状況なのに、どうしてドキドキしてしまうのだろうか。不思議で仕方がなかった。