第48話「鉄の魔法」



 ミツキの目が揺らいだのが、遠くからでもわかった。
 エルハムの目とミツキの目が合った時、エルハムは涙を溢し、ミツキは目を見開きだ。


 「……………っっ!!おまえっーーー!!!」
 「ちっ、もうここまで来たのか。早いな。」
 

 咄嗟に剣を構えて駆け出したミツキは、そのままエルハムに跨がる男に向かって突進してきた。
 コメットの男は、舌打ちをしながら苦い顔をして、魔法を発動させた。
 エルハムを脅すのに使った銀の針を数本出して、ミツキに向けてその鋭い針を素早く走らせた。
 けれど、ミツキは狼狽えることなく体を動かし避けたり、剣で薙ぎ払ったりしてそれを回避した。


 その後、すぐ男に斬りかかった。
 けれど、コメットの男もそう簡単には倒れるはずがなかった。
 咄嗟に魔法で剣を作り、ミツキが振り下ろした剣を受け止めたのだ。
 キンッという音が部屋に響く。
 ミツキはギリギリと剣を押しながら男を見下ろした。


 「おまえ、エルハムに何をしたっ!」
 「ふんっ、見ての通りだ。お楽しみの最中に邪魔が入ったけどな。」
 「…………っっ!」


 ミツキは、ちらりとエルハムを見た。
 エルハムの顔の傷を見たのか、体の跡を見たのか、それとも手や足についた枷が目に入ったのか。
 ミツキは、瞳に怒りを宿して苦しそうに見つめていた。そのまま素早く右手で木刀を抜き、男の脇腹に当てようとするが、男はベットから飛び退き、部屋の中央まで跳んだ。