第47話「最後の願いは」
☆☆☆
体が熱い。
人肌の感触が気持ち悪い。
………怖い。
エルハムは、そんな感情に支配されて体が動かなかった。
コメットの男の手が自分の体に触れ、時おりぬるりとした感触を感じて、身を震わせるだけだった。
恐怖を感じ、「イヤだ、やめて。」などを言うと、不機嫌そうに睨み付けられるので、エルハムは必死に声を殺していた。
「………イヤがるなんて勿体無い。初めてなのでしょう?楽しめばいいじゃないですか。」
「…………。」
「じゃあ、楽しい話をしましょう。お姫様の大好きな騎士様の話で………。」
「………ぇ………。」
エルハムの体に跨がったまま、男は動きを止めながら言った言葉に、エルハムは思わず目を開いて彼の瞳を見てしまった。
それを確認すると、男は得意気に話を始めた。
「あの男は異世界人なのだろう。……俺はこの世界で生まれはしたが、実は昔の記憶を覚えているんですよ。ここに来る前の記憶。そこで、あの男の名前と似たような人たちが住む国があったのを知っています。」
「それってもしかして………。」
エルハムは、男の話しを聞いて、驚き胸がドキッと高く鳴った。
図書館の本の他にも、ミツキの国の事を知る人が居たのだ。
男の話は嘘かもしれない。けれど、男の次の言葉を、エルハムはすでにわかっていた。
今、自分が考えているものと同じだという事が。
「えぇ……あなたが頭に浮かんでいる言葉と同じだと思いますよ。その国は、海に浮かぶ小さな島国、『日本』です。」
「っっ!」
目を大きくして驚愕の表情のエルハムを見て、男はクククッと笑った。