「エルハム姫………。」
「……………ぁ…………。」
自分の名前を呼ばれた。
それなのに、エルハムは違うと思った。
私の名前はエルハムだ、それはわかる。
けれど、呼び方が、声が………彼と違う。
わかった、瞬間。
エルハムは体が一気に冷たくなり、ガタガタと震えだした。
表情も固くなり、エルハムは恐怖の目で自分の体に跨がっている男をただ見つめた。
こんなにも容姿の違う男に、何故体を預けていたのか。
エルハムは自分の思考が恐ろしくなった。
すると、エルハムの様子が変わったのに気づいた男は、舌打ちをして先ほどまでとは違った、疎ましい目でエルハムを見た。
「薬の効果が切れたか。………大人しく快楽に浸っていればいいものを。」
「イヤ………離してっ!」
「まだ、思考だけが覚めたんだ。体は上手く動かせないだろう。大人しくしてろ。」
男が言うようにエルハムの体は何故か重くなっていた。腕や足を少し動かすだけでも容易なことではない状態だった。