「作戦は簡単だ。騎士団員数名がトンネルへ強行突破をする。そして、戦いながら西の方へと誘導する。そのうちに、俺とミツキがトンネル内に侵入する。そこからは、戦いながらエルハム様を探すだけだ。」
 「わかった。………よろしく頼む。」


 セリムの作戦を聞いたミツキは頷き、セリムの後ろに控えていた7人ぐらいの騎士団員にそう声を掛ける。彼らは囮になるのだ。激しい戦闘になるはずだ。
 けれど、彼らは「はいっ!」「お任せ下さいっ!」と、心強い返事をしてくれた。ミツキの表情も少し柔らかくなれた。


 「おいっ!」
 「ん…………っっ!………なんだ、これ?」


 セリムはミツキにある物を投げつけた。
 ミツキは手でそれを受け止めると、手のひらの中で、キラリと光る宝石があった。
 それは薄暗い森の中でも光っていた。


 「知らないのか………。それは、ラズワルド国の宝石の1つで。対魔法効果がある。それを持っていると相手が放った魔法は当たらなくなる。……まぁ、強力な魔法に対しては効果はないがな。」
 「すごいな………そんな物があるなんて。」
 「この石があるから、チャロアイト国はラズワルド国を警戒しているのだ。敵が攻め込んで来ても、この宝石を持っていれば魔法は効かないからな。あぁ、それと。その宝石はかなり高価だからなくすなよ。」
 「………どれぐらいだ?」
 「おまえの1年分の報酬でも足りんな。」
 「………気を付ける。」


 ミツキは、その宝石を大切に胸の内ポケットにしまった。


 「では、行くか。」
 「あぁ……。エルハムを助け出す。」


 ミツキ達は、エルハムが居るコメットの隠れ家を、睨み付けるように見つめた。
 すぐ傍まで来ているが、きっと険しい道となるはずだった。
 けれど、そこには希望しかない。
 ミツキはそんな風に思った。