ミツキだってセリムの気持ちはいたいほどわかっていた。
自分だって一人で行っても無事で済まないとわかっている。ミツキはそれでも言いと思っていた。エルハムを逃がすきっかけになれればいいのだ。
ミツキが行けば騒ぎになり、騎士団も駆けつけるだろうし、チャロアイト国の兵士だってくるだろう。エルハムさえ、先に助けられれば良いのだ。
あの男に、エルハムは何をされてしまうのか。そして、最後には命を取られてしまうのだ。ミツキは考えただけでも、頭がぐらぐらとして、体が焼けそうなほど熱かった。
「こんな時間さえも勿体ないんだよ!俺は行く………。」
「おまえは何にも役に立たないさ。魔法が使える相手に対等に戦えるはずもない。無駄死にするだけの事だ。」
「……………。」
ミツキは、セリムの言葉に反応せず、歩き出した。
「セリム様、ミツキ様っっ!!」
「………おまえは………。」
2人を呼ぶ声を聞いて、ミツキはすぐに後ろを振り向いた。そこには、ミツキが助け城で守られていた、青果店の娘のセイが居た。
そして、その後ろには彼女の護衛である騎士団員が数名走って追いかけてきていた。
「お待ちください!セリム様っ!」
「こら………!勝手に部屋を出るな。今はコメットが襲撃してきたばかりで危ないのだぞ。」
「お願いです。少しでいいので、お時間をください!」