第43話「叱咤激励」





 コメットの男がもたらした情報により、ミツキの鎖はほどかれ、牢屋からも解放された。
 それなのに、ミツキの気分は晴れなかった。

 急いで自分の部屋に戻り、ミツキはボロボロになった衣服を脱ぎ捨て、騎士団の正装に身を包むと、壁に立て掛けてある自分の細い剣を取り、すぐに部屋を出た。

 すぐにでもエルハムの元へ急ぎたかった。
 あの男がコメットの拠点へと戻ったのであれば、エルハムがどんな目にあってしまうのか。
 想像するだけで、ミツキは発狂しそうなほどに苛立った。

 ミツキの見る先は、コメットしかなかった。
 どんなに敵の数が多くても、厄介な相手だとしても、全員を相手してやるつもりになっていた。

 ミツキは誰にも声を掛けずに、城を出ようとした。


 「ミツキッ!」


 すると、大声でミツキを呼び駆け寄ってくる男が居た。もちろん、セリムだ。
 セリムは苛立った様子で、ミツキの傍まで来た。けれど、ミツキを彼を無視しようとして、背を向けた。

 
 「勝手な行動はするな。今から作戦を立てて………。」
 「それじゃ遅いんだよっ!」
 「一人で何が出来るというんだっ!」
 「………やってやるさ。早く行かないとエルハムがどうなってしまうか聞いただろ!」
 

 エルハムは背を向けていたが、勢いよく振り向き、セリムを睨み付けながらそう言葉を投げつけた。
 けれど、セリムも1歩もひかないずに、ミツキにまた駆け寄ろうとしていた。