「エルハムは、俺に日本へ帰れと言いました。……そのために、チャロアイトに向かったのだと思います。………けれど、ただ図書館に向かったわけではないと思うのです。……エルハムの表情は、まるで………。」
「殺されに行くようだった?」
「なっっ!!」
ミツキは、エルハムの行き先を考え、それをアオレンに伝えていた。ずっと考えていた事だった。
その答えを誰かが続けたのだ。
それは知らない声。ミツキが驚き、そちらを見つめてる。
そこには、騎士団の正装である青の服を着ている男がいた。
しかし、他の騎士団とは雰囲気が全く違っており薄ら笑いを浮かべているのだ。
その様子を見て、ミツキは嫌な予感がしたのか、アオレン王を庇うように立ち、剣はなかったが拳を前に出して構えた。そして、同じようにセリムも何かを感じ取ったのか、剣を抜いて、そのニヤリと笑う騎士団員に剣を向けた。
「おまえ、何者だ………騎士団員ではないな。」
「あぁ、やっと気づいてくれたんですね。少し前から居たものですが、全く気づいてくれないので、つまらなくしていた所です。」
「…………おまえ、コメットだな。」
ミツキが睨み付けながら低い声でそういうと、周りの人々の体が強ばるのがわかった。
けれど、そう言われた本人だけは、実に楽しそうに笑っていた。
「そうです。大正解です。よくわかりましたね。あ、私を殺してはダメですよ。お姫様からの伝言を伝えられなくなりますから。」
「エルハム様は無事なのか!?」
セリムの焦った声を聞いて、その男はニヤリと笑った。
「殺した………。」
「っっ!」
「と、言いたいところですが、お姫様と全てを話すようにと約束しましたので、本当の事を話します。姫様は、私たちコメットの基地にいます。そして、そこの囚われの騎士様に、姫からの贈り物です。」