「お姫様だ。こんな場所がお似合いでしょう?それに、もしかしたらあと数日の命ですからね。少しぐらいは快適に過ごせるようにしてあげましょう。」
 「…………っっ!」
 「おまえは取引材料だ。見えるところには傷つけないようにする。…………見えないところにはなっ!」


 その男の口調が変わり、雰囲気も一転した。
 男はエルハムに近づき、顎を指で引き上げて、口元を隠していた布を取り、エルハムの頬をペロリと舐めた。
 エルハムは、絶句し体を固まらせて、その男を恐る恐る見つめた。


 「………寂しかったら相手をしてやる男は沢山いる。余計なことをしたら、お前のその綺麗な体を使わせて貰う事になる。」
 「…………わ、わかったわ………。だから、放れてっ!」
 「………くくくっ、強気な姫も悪くない。俺達の機嫌が悪くならないよう、せいぜい祈っておくんだなっ!」
 「ねぇ………1つだけ教えて。シトロン国に密偵はいるの?」
 「密偵………?」


 その男はジロリとエルハムを見つめた。そして、怒った様子でエルハムに怒鳴り付けた。