『異世界から来た、愛しい騎士様へ

 私は、ミツキの事を愛しています。
 だから、あなたと離れたくない。ずっとそう思っていました。けれど、ミツキが苦しんでいる姿を見るのはとても辛いです。ミツキには笑顔で幸せに生きて欲しいです。
 シトロン国でそれが叶わなくなってしまうのならば、私がミツキを日本に戻す方法を探します。
 だから、ミツキは待っていてください。
 私が、ミツキを守ります。
 ………………大好きです、いつまでも。

          エルハム・エルクーリ』



 「エルハムっっ…………。」


 手に持っていた紙に、ポツポツと水滴が落ちた。それを見て、ミツキは自分が泣いのだとやっとわかった。
 ミツキは、涙が出るのを止められなくなっていた。

 エルハムは、自分の気持ちよりもミツキの幸せを願ってくれた。
 守ってくれる、と言ってくれた。


 子どもの頃、自分の父親に襲われた時。
 母親を守りたいと思った。そして、強くなりたいとも願った。
 それと同時に、「誰か助けてっ!」と強く願っていた。
 人を守りたい。
 誰かに守ってもらいたい。
 そんな2つの反対の願い。


 エルハムは、昔も今もミツキを守ってくれているのだ。
 そんな彼女をミツキは気高く強く、そして美しいと思っていた。
 そして、それが恋だというのを気づかないフリをしていたのだ。彼女は一国の姫だ。高嶺の花で、自分が恋をしていい相手ではないのだ。
 それをわかっていて、自分の気持ちに蓋をしていた。


 だからこそ、彼女に告白されて戸惑い、躊躇してしまった。
 けれど、今ははっきりとわかる。
 彼女に「愛している。」と言われて、感動して泣けるぐらいに嬉しかったのだと。


 「今ごろ気持ちに気づくなんて遅すぎるよな。………エルハム、ごめん。」


 ミツキは手紙を見つめたあと、丁寧にたたんで、ズボンのポケットにしまった。


 「俺の方こそ、おまえに守られてばっかりなんだ。エルハム、俺もおまえが大切なんだ………だから、今度こそおまえを守りたい。」


 ミツキはギュッと手を握りしめ、その場から立ち上がった。
 先ほどまで感じていた寒気や怠さを不思議と感じることはなく、むしろ力が湧いてくる感覚だった。


 「待っててくれ、エルハム。」


 ミツキはそう呟き、また繋がれた鎖を強く引っ張り始めた。