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 エルハムが去った後、しばらく一人で脱獄を試みていたが、やっとの事で騒ぎに気づいた看守が慌ててミツキの元へやってきた。


 「おいっ!おまえ、何やっている!そんな事をしてもここから出られるわけではないぞ!」
 「違うっ!エルハムが…………今、エルハムは何をしている!?」
 「エルハム姫様?………エルハム姫はこんな時間だ、お休みになっているに決まってるだろう?」
 「違うっ!さっきまで、ここに居たんだっ!様子がおかしかった……本当に城にいるのか確認してくれ!」


 ミツキは必死の思いで看守の男に頼んだ。
 けれど、ポカンとしたあとミツキを見て苦笑した。


 「おまえ、何を言っているだ?ここに姫様が来るわけがないだろう。………熱のせいで夢でも見たんだ。」
 「そんなはずはないっ!」
 「いいからさっさと寝ろっ!うるさいとまた水をかけるぞっ!」


 看守の男はそう怒鳴ると、さっさと看守の部屋に戻ってしまった。
 ミツキの言葉を全く信じていない様子だ。


 「くそっ!!」


 ミツキが両手で強く床を叩いた時だった。
 ミツキの左腕の手錠と手首の間に何かが挟まっているのに気づいた。

 ミツキは不思議に思い、それをゆっくりと引っ張るとそれは白い紙だった。何回か折られており、ミツキはそれを開いてみると、そこには日本語で何かが書かれていた。


 「…………っっ…………。」


 日本語を書けるのはこのシトロンでは2人しかいない。ミツキ自身と、エルハムだけだった。
 そして、その紙には、ずっと見てきた彼女の字が書かれていた。

 夜にエルハムがここに訪れたときに、こっそりとミツキに贈った物なのだろう。
 ミツキは、その手紙を見つめエルハムの字に視線を落とした。

 そこには、彼女の繊細で丁寧な字でミツキに宛ててメッセージが残されていた。