「エルハム………なのか?本物……?夢じゃないのか?」
 「………ミツキっ!大丈夫?………こんなにやつれてボロボロになってしまって。それに、体が熱いわ。熱があるの?」


 エルハムは心配そうにミツキに駆け寄ると、膝をついてミツキの顔に触れた。
 ほんのり温かく、花の香りがする。本当のエルハムだとわかり、ミツキはホッとしてしまった。どうして彼女がこの牢屋に来たのかはわからなかった。
 けれど、エルハムに会い、触れられた事がとても嬉しかった。


 「エルハム………会いたかった。」


 ミツキは朦朧としたまま本音を彼女に伝えた。声を上手く発せられず、言葉はたどたどしくなってしまう。けれど、弱っているからだろうか。素直な気持ちが言葉に出来た。

 すると、エルハムは目に涙を浮かばせて、「ミツキ……。」と小さな声で呼んだあと、ポロポロと涙を溢した。その涙がミツキの頬や髪に落ちる。それ感じ、ミツキは温かいなと思った。
 人が与える感触は全て温かい。そう感じるのは、彼女だからだろうか。


 「ミツキ、ごめんなさい………。私のせいで、あなたがこんな目にあうなんて………。」
 「エルハムのせいじゃないだろ。おまえは、俺のためにやってくれたんだ。嬉しかったよ。」
 「…………ミツキ。」
 「……俺は日本に帰りたいのかと思ってた。けど、こんな風に捕らえられても不思議とここに来た事を悔やむ事はなかったんだ。………1番に思ったのは、エルハムに会いたいって思った。」
 「……………っっ…………。」