第38話「震える体」
★★★
「だから………俺は密偵なんてしていない……。」
「そこまで弱っていてよく嘘が吐けるな。」
「………嘘ではない。」
じめじめとして冷たい空気。
シトロン国の地下には牢屋があるのは知っていたが、こんな場所だとは自分が入ってから初めて知った。
ミツキは、両手を手錠で拘束されていた。そして、今は両腕を引っ張られるように上から吊るされていた。
目の前には数人の看守と騎士団員。
先程から、ずっと同じことを彼らに問いかけられ続けている。「お前が密偵だろ?」「いい加減、罪を認めろ。」と。
そして、「違う。」と返事をすると水をかけられた。それが、昨日の夜と今朝に行われた。
この国に酷い拷問がなくてよかったと思いながらも、体は水のせいで冷えきっていた。太陽の届かない部屋はとても寒く感じてしまう。
寒さを感じながら過ごした夜のため、体力を使い果たしたのか、ミツキはぐったりとしていた。たかが水を被っただけなのにと思いながらも、しゃべるのも億劫になるほどだった。
「………だめだな。これだと今はしゃべらないだろう。睨み付けるだけの気力はあるようだしな。………また、夜だ。」