いつもは優しいセリム。
 エルハムの事を思い、親切にしてくれて、国のために誠心誠意尽くしてくれる、年上として尊敬できる彼。そんなセリムからの言葉とは思えないもので、エルハムは驚き、ショックを受けていた。


 「………私は愛しい人とずっと一緒に居たいと思います。それがどんな方法であっても。」
 「……セリム、そんなのおかいしわ。」
 「私が愛しているのは、あなた様です。エルハム様………。」
 「………えっ………。」


 セリムの告白と共に、エルハムは彼に抱きしめられていた。
 彼の鍛えられた体で強く抱き締められる。とても熱くて、鼓動も早くなっているのがわかった。
 以前約束を交わした時の抱擁とは全く違う。甘い熱を帯びたものだとエルハムは気づいた。


 「エルハム様も気づいていらっしゃいましたよね……私の気持ちを。」
 「そんな事は………。」
 「知らなかったのならば、今からずっとお伝えします。昔からあなた様をお慕いしておりました。愛しているのです、エルハム様。」
 「セリム………お願い、落ち着いて。離してっ………。」
 「私から逃げないでくださいっ!」
 「やめて、セリムっ!………あっ………。」


 エルハムは必死なって想いを伝えようとするセリムの様子が恐ろしく感じてしまい、彼の腕の中で激しく体を動かした。
 いつもの冷静で優しい彼ならば、こんな風に話をすることなどありえないのを、エルハムは知っている。
 だからこそ、知らない彼の姿が怖かった。

 そして、暴れた体を動かし無理に後ろに逃げたため、バランスを崩してしまったのだ。

 倒れる!と思い、目を瞑ったけれど、衝撃を感じる事はなかった。

 その代わり、ふわりとしたベットの感触を背中で感じた。
 そして、目の前には綺麗な星のようなオレンジ色の瞳で見つめるセリムの顔があった。

 エルハムはセリムのベットに押し倒され、そして深くキスをされている事にようやく気づいて目を大きく開いたのだった。