ミツキが捕らえられたその日。
エルハムはベットの中で考えているうちに、うとうとと寝てしまっていた。
緊張しながらのチャロアイトへ侵入、図書館での強い視線、そしてミツキの密偵疑いで捕らえられた事などで、精神的にも体力的にも疲れていたのだろう。
エルハムは朝までぐっすり寝てしまっていた。
久しぶりに母の夢を見た。
けれど、いつもの夢ではなく、優しくて気高く、エルハムが憧れていた母は笑顔でこちらを見て微笑んでいたのだ。
「お母様!」と呼んでも、手を伸ばしても、言葉を掛けてくれる事も触れる事も出来なかった。
けれど、大好きな母の笑顔を見て、エルハムは少しだけ心が安らんだ気がしていた。
トントンッ。
朝のいつもの時間。
部屋を扉を叩く音が響いた。
エルハムは、ボーッとした頭でその音を聞いていたけど、すぐに飛び起きた。
この時間にエルハムを起こしに来るのはミツキだった。
もしかして………!そんな思いが頭をよぎったのだ。
エルハムは駆け出し、よろけながら扉に駆け寄り勢いよく扉を開けた。
すると、驚いた顔のセリムが居た。
「あぁ………セリム………。おはよう。」
「………おはようございます、エルハム様。今日からあなた様の専属護衛として身の回りの仕事をさせていただきます。」
「え…………。」