『次の朝方にチャロアイトにエルハム姫を連れてこい。作戦は打ち合わせ通り。成功すれば報酬ははずむ。』
 『次の朝方は難しい。日程は追って連絡する。』


 そう書かれていたのだ。
 エルハムは絶句しながらも、ある事にすぐに気づいた。


 「こ、これはミツキの字ではありません!彼の文字を教えたのは私ですからすぐにわかります。」
 

 送られた手紙についてはわからない。
 けれど、ミツキが書いたであろう手紙の文字はミツキのものとは全く違うものだった。
 彼に幼い頃からこちらの世界の文字を教えていたのはエルハムだ。誰よりもわかると思った。

 けれど、アオレンは首を横に振った。


 「エルハムよ……。おまえの言っている事は本当だろう。だけれど、こういう物が出てきてしまった場合、最悪の事態を考えて行動しなければならない。ミツキの事は、チャロアイト国国王にも国に出入りしていた形跡があるのか聞いているところだ。………真実がわかるまで、ミツキには地下の牢屋に居てもらう。………我娘ならば、それが最善だとわかってくれるな。」


 自分の父であるアオレンに子どものように優しく説得されたけれど、エルハムは納得出来るはずがなかった。
 エルハムは無言のまま、その場から離れてアオレン王の部屋から出ていった。



 「ミツキが密偵なんて嘘よ。」


 エルハムは、真っ白になった頭で、廊下で立ち尽くしながら、そう呟きその場でお守りを握りしめた。
 エルハムの体も、そしてお守りも、冷たく冷えきっていた。